こんにちは、ユウ塾長です。みなさんは、在宅療養中の高齢者に「水分をとって」と声をかけても飲んでもらえず、どうしたらよいか迷ったことはありませんか?「喉は渇いていない」と言われたり、飲むとむせたりすることもありますよね。今回は、水分を勧めるときの説明と、飲めない理由を聞くコツを一緒に整理していきましょう。
結論:量を勧める前に、飲めない理由と安全性を確かめる
在宅療養中の高齢者に水分を勧めるときは、一律の量を飲んでもらおうとするのではなく、水分制限の有無、飲み込みの安全性、本人が飲みにくい理由を確認することが大切です。
「水分をとってください」だけで終わらせず、「飲むとむせますか」「トイレが心配ですか」など、答えやすい質問をしてみましょう。本人の希望や生活に合わせて、飲み物の種類や温度、飲む量・タイミングを一緒に考えます。
むせや咳、飲み込んだ後の声の変化がある場合は、むせを無視して飲水を続けないでください。また、心不全や腎不全などで水分制限が指示されていないか、まず確認しましょう。
読了時間の目安:約12分
この記事でわかること
この記事では、次のポイントを解説します。
- 「飲まない」と決めつけず、飲めない理由を探す視点
- 本人が答えやすい質問と、水分を勧めるときの伝え方
- 脱水や嚥下の状態を判断するときの注意点
- 在宅で飲水を支援するときの記録や多職種連携
結論の根拠:飲水が難しい理由はひとつではない
高齢者では、口渇感が低下し、体の水分が不足していても自分から飲みたいと訴えないことがあります。そのため、「喉が渇いていない」という言葉だけで飲水量が十分とは判断できません。
一方、飲まないように見える背景には、むせや嚥下のしにくさ、口の痛み、吐き気、トイレへの不安、飲み物の味や温度が合わないことなど、さまざまな事情が考えられます。明治の高齢者の水分補給に関する解説で紹介されている介護者向け調査でも、「本人が進んで飲まない」「拒否される」「むせる」「嚥下困難」などが飲水支援の難しさとして挙げられています。ただし、これは企業によるアンケートであり、高齢者全体における医学的な有病率を示すものではありません。
また、「要介護高齢者に対する脱水予防のための飲水援助に関する基礎的研究」の書誌情報や、「高齢者の脱水症予防のケアに関する文献的考察」では、高齢者の飲水支援や脱水予防に関する考え方が扱われています。飲水を促すだけでなく、本人の生活状況を踏まえて支援を考える視点が大切です。
「水分をとって」を、伝わる言葉に変えてみる
「水分をとってください」という声かけは、必要な理由や、どのくらい・どう飲めばよいのかが伝わりにくいことがあります。本人が選べる余地を残しながら、具体的に伝えてみましょう。
たとえば、次のように声をかけられます。
「汗や尿で体の水分が減ると、だるさやふらつきにつながることがあります。一度にたくさんではなく、まず一口ずつ飲んでみませんか?」
「水だと飲みにくいですか?温度や飲み物を変える方法もあります。一緒に飲みやすいものを探してみましょう。」
このように、理由を短く伝えたうえで、無理のない方法を相談します。「全部飲んでください」と一方的に求めるより、本人が何なら試せそうかを尋ねるほうが、希望や困りごとを知るきっかけになります。
反対に、「飲まないと危険です」と不安だけを強調したり、心臓や腎臓の状態を確認せずに多量の水分を勧めたりするのは避けましょう。必要な量は年齢だけで決まるものではありません。
飲めない理由を聞くときのコツ
まずは「なぜ飲まないのですか」と責めるように聞くのではなく、本人が答えやすい具体的な質問にしてみましょう。
身体のつらさや飲み込みを尋ねる
- 「飲むと、むせたり咳が出たりしますか?」
- 「喉や口の中に痛いところはありませんか?」
- 「飲み込むのに時間がかかりますか?」
- 「飲んだ後、口の中に残る感じはありますか?」
- 「吐き気や、お腹が張る感じはありませんか?」
水やお茶を飲むときのむせ・咳、飲み込んだ後の声の変化、食事にかかる時間なども観察しましょう。本人に自覚がないこともあるため、家族や訪問介護職から「最近むせるようになった」「食後に咳をする」といった情報がないかも確認します。
むせや咳がある場合は、脱水予防を急ぐあまり、そのまま飲水を続けないことが大切です。姿勢や飲み物の形状、とろみの使用については、医師や看護師、言語聴覚士などの評価に基づいて検討します。「とろみをつければ安全」と一律に判断しないでくださいね。
生活上の心配や好みを尋ねる
- 「飲むとトイレが近くなるのが心配ですか?」
- 「夜にトイレへ行くのが大変で、控えていますか?」
- 「起き上がったり、コップを持ったりするのがつらいですか?」
- 「冷たいものと温かいものでは、どちらが飲みやすいですか?」
- 「水とお茶なら、どちらが飲みやすそうですか?」
- 「一度に飲むより、少しずつならできそうですか?」
飲み物が手の届かない場所にある、介助を頼みにくい、コップが持ちにくいなど、環境が理由になっていることもあります。本人の言葉だけでなく、実際に飲もうとする場面を見て、何が負担になっているのか確かめてみましょう。
必要な水分量は一律ではない
体重1kg当たり約30mLという水分量の目安が紹介されることがあります。健康長寿ネットの水分摂取に関する解説などで示される目安は、全員がその量を飲み物として摂取すべきという意味ではありません。食事や汁物などに含まれる水分も考慮し、本人の状態に合わせて検討する必要があります。
発熱、発汗、下痢、嘔吐などがある場合は、水分の出入りが変わることがあります。一方、心不全、腎不全、透析、肝疾患などでは、水分管理に個別の指示がある場合もあります。目安だけを見て飲水量を決めず、医師や管理栄養士などの指示と照らし合わせてください。
脱水を疑うときは、複数の情報を組み合わせる
飲水量が少ないときは、尿量や食事量、体重の変化、発熱や下痢・嘔吐の有無などを確認しましょう。口の中の乾燥や尿の色の濃さ、ふらつき、倦怠感なども手がかりになります。
ただし、口の乾燥や尿の濃さだけで脱水と決めることはできません。薬剤や食事内容、腎機能、感染症なども影響するためです。皮膚の乾燥や皮膚をつまんだときの戻り方も、高齢者では判断に限界があります。ひとつの所見だけでなく、本人の普段との違いや複数の情報を合わせて考えましょう。
水分がほとんど摂れない状態が続く、繰り返し嘔吐する、尿量が明らかに減る、意識や反応が変化する、強いふらつきがあるといった場合は、主治医や訪問看護師などに相談してください。飲水時に毎回むせる場合も、無理に続けず、嚥下の状態を評価してもらいましょう。
在宅で飲水を支援するときの実践ポイント
一度にたくさんではなく、生活の中で少しずつ
一度に多く飲むのがつらい人には、起床時や食事時、服薬時など、日々の生活の流れに合わせて少量ずつ提案する方法があります。ただし、夜間の排尿が心配な人や、水分制限がある人は、時間帯や量を個別に調整してください。
本人が選べる飲み物や方法を探す
水が飲みにくい場合でも、温度や飲み物の種類、容器を変えると飲みやすくなることがあります。汁物やゼリーなどを含め、どのようなものなら安全に摂取できるかを本人と相談してみましょう。
糖尿病、腎疾患、心不全などがある場合は、飲み物の糖分や塩分、カリウム、総水分量にも配慮が必要です。経口補水液も、誰にでも日常的な飲み物として適するわけではありません。必要に応じて医師や管理栄養士に確認してください。
飲水量だけでなく、飲めた条件も記録する
「何mL飲めたか」に加えて、飲み物の種類や温度、飲んだときの様子、本人が話した理由も記録しましょう。たとえば、「冷たい水は飲まなかったが、常温のお茶は少しずつ飲めた」「飲むと咳が出た」といった情報があると、次の支援を考えやすくなります。
摂取量、食事量、尿量、体重、発熱・嘔吐・下痢、むせや咳などを経時的に見て、変化をチームで共有しましょう。水分制限や嚥下の問題がある場合は、主治医、訪問看護師、言語聴覚士、管理栄養士などと連携して方法を考えます。
看護師・看護学生が考える順序
判断に迷ったら、次の順番で整理すると考えやすくなります。
- 急な体調変化がないか確認する
意識や反応、尿量、嘔吐、ふらつきなどを確認し、気になる変化があれば相談します。 - 水分制限の指示を確認する
心不全や腎疾患などによる指示がないか、記録や本人・家族への確認を行います。 - 飲み込みの安全性を確認する
むせ、咳、声の変化、食事にかかる時間などを観察します。 - 本人に飲みにくい理由を尋ねる
痛み、吐き気、味や温度、トイレ、姿勢、介助の必要性などを具体的に聞きます。 - 本人が試せる方法を一緒に探す
飲み物の種類や温度、量、時間、容器などを相談します。 - 飲めた量と、そのときの様子を記録する
食事や排泄、症状の変化と合わせて確認します。
「飲まないから、もっと勧める」と急ぐのではなく、飲めない理由と安全性を先に確認することが、支援の手がかりになります。
私が現場で迷った、ある飲水の場面
私が看護師をしていた頃、訪問先で水分を勧めると、「いらないよ。飲むとトイレに行きたくなるから」と返されたことがありました。私は最初、「喉が渇いていないのかな」と考え、別の飲み物を提案しようとしていました。
でも、その方の言葉を聞いて、飲み物の好みだけの問題ではないと気づきました。そこで、「夜のトイレが心配なんですか?」と尋ねると、夜間の移動が負担だと話してくれました。私はその場で飲水を強く勧めるのではなく、いつ、どのくらいなら負担が少ないかを一緒に考え、気になったことを訪問チームに共有しました。
今振り返ると、私が知りたかったのは「どうすれば飲んでもらえるか」でした。でも、その方が伝えていたのは「飲んだ後の生活が心配」ということだったのだと思います。この経験があってから、私は飲まないという行動だけでなく、その人が何を困っているのかを聞くようになりました。
この体験談は、医学的根拠を示すものではありません。飲水支援を考えるとき、本人の言葉や生活上の困りごとに耳を傾ける大切さを、看護場面と結びつけてお伝えしています。
まとめ
在宅療養中の高齢者に水分を勧めるときは、量を決めて促す前に、次の点を確認しましょう。
- 水分制限の有無と、飲み込みの安全性を確かめる
- 「飲まない」と決めつけず、痛みやむせ、トイレへの不安などを具体的に聞く
- 本人が飲みやすい種類・温度・量・タイミングを一緒に探す
- 飲水量だけでなく、食事や排泄、症状の変化も記録する
「水分をとって」と伝えることがゴールではありません。本人が安全に、納得できる方法で水分を摂れるよう、まずは飲めない理由に耳を傾けてみてくださいね。
FAQ
喉が渇いていないと言われたら、飲水を勧めなくてよいですか?
「喉が渇いていない」という言葉だけでは、水分が十分かどうかは判断できません。飲水量や食事量、尿量、体調の変化なども確認し、水分制限の有無に沿って考えましょう。
水を嫌がる場合、経口補水液を勧めればよいですか?
誰にでも経口補水液が適するとは限りません。糖分や塩分などに配慮が必要な場合もあるため、病状や水分管理の指示を確認し、必要に応じて医師や管理栄養士に相談してください。
むせるけれど、脱水が心配です。少しずつ飲ませてもよいですか?
むせがあるときは、飲水を続ける前に嚥下の安全性を確認することが大切です。無理に飲ませず、主治医や看護師などに相談し、必要に応じて専門職の評価を受けてください。
参考文献
- 「要介護高齢者に対する脱水予防のための飲水援助に関する基礎的研究」書誌情報。CiNii Research
- 「高齢者の脱水症予防のケアに関する文献的考察」。J-STAGE
- 明治「高齢者の脱水と水分補給」。明治
- 健康長寿ネット「水は1日どれくらい飲めば良いか」。健康長寿ネット
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
脱水や嚥下の状態を観察・評価するフィジカルアセスメント力を高めたいときにおすすめです。
※本ページにはPRが含まれています。
実習記録、AIにちょっと手伝ってもらおう!
実習記録って、書き始めるまでが大変ですよね…😢
そんなときは、「AI看護学生 あいちゃん」を使ってみてください!
実習目標や看護計画など、あなたの「どうしよう…」を一緒に考えてくれます。
\ 看護学生なら無料!使ってみてね! /
LINEで友だち追加するだけ!
実習中の「ちょっと困った…」を、あいちゃんに相談してみよう😊



