こんにちは、ユウ塾長です。糖尿病の患者さんが発熱や嘔吐で食べられなくなったとき、「薬は全部止めたほうがいいの?」「インスリンも休んでいいの?」と迷ったことはありませんか?食事が摂れないのに血糖値が上がることもあり、判断に悩みますよね。今回は、シックデイに看護師が確認したいことと、休薬や受診の判断をどう支援するかを整理します。
結論:薬を一律に止めず、状態を確認して医師につなぐ
シックデイでは、「食べられないから糖尿病薬をすべて中止する」と判断しないことが大切です。血糖値、食事・水分摂取、脱水の兆候、意識や呼吸の状態、薬の使用状況を確認し、薬剤ごとの対応を主治医に相談しましょう。
特に、インスリンは自己判断で中断しないよう伝えます。経口薬は薬剤の種類や脱水、食事摂取の状況によって休薬を検討するものがありますが、看護師が独断で中止を指示するのではなく、個別の指示につなげることが基本です。日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイドライン2024』でも、シックデイに薬を自己判断で中断せず、医療機関に相談できる体制を整えることが示されています。
読了時間の目安
約10分
この記事でわかること
この記事では、次のポイントを一緒に確認します。
- シックデイに血糖値が不安定になる理由
- 看護師が確認したい症状、血糖値、食事・水分摂取
- インスリンや経口薬を薬剤別に考える視点
- 受診や医師への連絡を急ぎたいサイン
- 患者さんの相談・受診につなげる伝え方
結論の根拠:食事量だけでは血糖や薬の対応を決められない
シックデイとは、発熱や感染症、嘔吐、下痢、食欲低下などで、糖尿病の血糖管理が不安定になりやすい状態です。食事が減っても、感染や発熱による体の反応で血糖値が上がることがあります。一方、食事量が少ない状態で薬の作用が続き、低血糖になることもあります。ディアケア「看護師が行うシックデイへの対応」
そのため、「食べていないから低血糖だろう」「血糖値が高いからインスリンを止めよう」と、食事量や血糖値だけで判断するのは危険です。日本糖尿病学会のガイドラインは、シックデイの薬剤対応について、自己判断による中断を避け、医療機関へ相談するよう示しています。
また、国立健康危機管理研究機構の糖尿病情報センター「シックデイ」は、嘔吐・下痢が続く、38℃以上の高熱が続く、24時間食事が摂れない、血糖値350 mg/dL以上が続く、意識状態が変化する場合などを、医療機関への連絡・受診を考える目安として挙げています。これらは受診相談の目安であり、患者さんの状態や主治医の指示、施設の手順に合わせて判断してくださいね。
シックデイで看護師が確認したいこと
まずは、症状がいつ始まり、どのように変化しているかを確認しましょう。本人が「食べられない」と話していても、食事・水分の量や最後に摂った時刻を具体的に聞くと、状態を整理しやすくなります。
症状と水分・食事の状況
次のような情報を、発症時刻や経過とあわせて確認します。
- 発熱の有無と体温の推移
- 咳、咽頭痛、呼吸困難などの感染症状
- 嘔吐、下痢、腹痛の有無や回数
- 最後に食事を摂った時刻と摂取量
- 水分摂取量、口渇、口腔内の乾燥
- 尿量や排尿回数
- 倦怠感や眠気、意識の変化
嘔吐や下痢が続いて水分が摂れない、尿量が著しく減っているなど、脱水が心配される状態では、早めに医療者へ相談しましょう。糖尿病情報センターも、シックデイには可能な範囲で水分を摂り、体温や食事量などを記録することを案内しています。糖尿病情報センター「シックデイ」
血糖値と薬の使用状況
血糖値は、一度の測定値だけでなく、測定時刻や食事、薬の使用との関係を含めて確認します。シックデイ中は、食事量にかかわらず普段より頻回に血糖を測定することが推奨されています。糖尿病情報センター「シックデイ」
確認するときは、以下を時系列で整理してみましょう。
- 血糖値と測定時刻
- 食事との関係
- インスリンや内服薬の薬剤名、使用量、使用時刻
- 注射や内服ができているか、いつからできていないか
- 発熱、嘔吐、下痢などが始まった時刻
- 血糖値が上昇・低下しているか
インスリンポンプを使用している場合は、注入が中断していないか、器具に問題がないかも確認します。血糖測定やケトン体測定の頻度は、患者さんごとの計画や医師の指示に沿ってください。
ケトアシドーシスを疑う兆候
強い口渇、多尿、吐き気・嘔吐、腹痛、強い倦怠感、深く速い呼吸、意識の変化などがある場合は、糖尿病性ケトアシドーシスの可能性も考えて速やかに報告します。呼気にアセトン臭がある場合も、あわせて伝えましょう。
特に、SGLT2阻害薬を使用している患者さんは、血糖値が著しく高くなくてもケトアシドーシスが起こる可能性があります。血糖値だけで「大丈夫」と判断せず、薬剤歴と症状をあわせて確認してください。日本腎臓病薬物療法学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する医療従事者向け資料」
休薬・継続は薬剤ごとに考える
薬をどうするか迷ったときは、まず薬剤名を確認し、患者さんが事前に受けたシックデイルールがあるかを確認しましょう。薬を一律に中止するのではなく、個別の指示を確かめて医師につなぐことが大切です。
インスリン:自己判断で中断しない
食事が摂れない場合でも、インスリンを自己判断で中断しないよう伝えます。特に基礎インスリンは、食事の有無だけで中止を判断しません。インスリンを中断すると、特に1型糖尿病では糖尿病性ケトアシドーシスにつながる危険があります。日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイドライン2024』
食事時のインスリンや追加インスリンの調整は、食事量、血糖値、嘔吐の有無などをふまえた、あらかじめの医師の指示に従います。患者さんが注射を中断している場合や、どう調整すればよいか分からない場合は、薬剤名・量・最終注射時刻を確認して、早めに医師へ報告してください。
メトホルミン:脱水や摂取不良があるときは相談する
メトホルミンなどのビグアナイド薬は、嘔吐や下痢、脱水、腎機能低下、食事摂取不良がある場合、乳酸アシドーシスのリスクを考慮して一時休薬を検討することがあります。日本腎臓病薬物療法学会の資料や糖尿病情報センターの解説を参考に、症状や水分摂取、尿量などを整理して医師へ相談しましょう。
SGLT2阻害薬:体調不良や脱水があれば早めに確認する
発熱、嘔吐、下痢、食事摂取不良、脱水がある場合は、一時休薬を検討する薬剤です。ただし、休薬の判断は患者さんの個別の指示や医師の判断につなげます。日本腎臓病薬物療法学会の資料
この薬を使用している患者さんに、吐き気、嘔吐、腹痛、強い倦怠感、呼吸の異常があれば、血糖値が極端に高くなくても報告を急ぎましょう。
SU薬や食事に合わせて使う薬:摂取量を確認する
SU薬は、食事摂取量が低下していると低血糖を避けるために減量や中止を検討することがあります。特に高齢者や腎機能が低下している患者さんでは、低血糖が長引くことにも注意が必要です。日本老年医学会関連の糖尿病治療ガイドライン資料
速効型インスリン分泌促進薬やα-グルコシダーゼ阻害薬など、食事に合わせて使う薬も、食事が摂れない場合に対応の確認が必要です。薬の種類によって扱いが異なるため、「食べられないから全部止める」ではなく、事前の指示を確認して医師に相談しましょう。糖尿病情報センター「シックデイ」
受診・連絡を急ぎたい目安
以下のような場合は、自宅での経過観察を続けず、主治医や医療機関へ速やかに相談するよう支援します。
- 嘔吐や下痢が止まらない
- 38℃以上の高熱が続く
- 24時間にわたり食事がまったく摂れない、または極端に少ない
- 血糖値350 mg/dL以上が続く
- 意識状態に変化がある
- 尿量が著しく減るなど、脱水が心配される
- ケトン体が陽性、または増加している
- 腹痛、嘔吐、深く速い呼吸がある
- インスリンが注射できない、または中断している
- 薬の調整方法が分からない
これらは糖尿病情報センター「シックデイ」が示す連絡・受診の目安です。患者さんの病状や主治医の個別指示によって対応は異なります。意識や呼吸に異常があるなど緊急性が高いと考えられる場合は、施設の手順に沿って速やかに対応してください。
独居、認知機能の低下、支援者がいないなど、本人だけでは体調や薬の管理が難しい状況も、受診・連絡を考えるうえで共有したい情報です。
医師へ報告するときは、状況を時系列で伝える
報告では、「食べられません」という情報だけでなく、症状の経過、血糖値、薬の使用状況をまとめましょう。SBARなどを使うと、伝える内容を整理しやすくなります。
- S(状況):現在の症状、血糖値、意識・呼吸の状態
- B(背景):糖尿病の病型、使用中のインスリンや薬、併存疾患
- A(評価):脱水、低血糖・高血糖、ケトアシドーシスの可能性、薬の使用状況
- R(依頼):薬の継続・休薬の指示、測定や受診の必要性
「食べられないので薬を全部止めました」と聞いた場合は、薬剤名と最終使用時刻を確認しましょう。インスリンを中断している場合は、その情報を優先して医師へ伝えます。
患者さんが相談できる準備を支援する
シックデイは、体調を崩してから初めて薬の扱いを考えると、本人も家族も迷いやすくなります。元気なときに、主治医への連絡先や薬ごとの対応を確認しておくと、必要なときに相談しやすくなります。
患者さんには、体温、食事・水分量、血糖値、尿量、薬の使用状況を記録する方法を一緒に確認してみましょう。可能な範囲で水分を摂ることや、インスリンを自己判断で中断しないことも伝えます。内服薬の休薬は、薬剤別の事前指示に従うよう説明してください。糖尿病情報センター「シックデイ」
看護場面をイメージする一例
ここでは、筆者個人の実体験としてのエピソードを作るのではなく、判断の流れが分かるように場面を例示します。
患者さんが「食べられなかったので、薬は全部飲みませんでした」と話したとします。まず私は、薬の種類を確認し、インスリンを使っているか、最後に注射・内服したのはいつかを整理します。「食べていないから、薬を止めたのですね」といったん受け止めつつ、発熱や嘔吐、水分摂取、血糖値、意識や呼吸の状態も確認します。
ここで迷いやすいのは、食事が摂れていないことだけで、低血糖や薬の休薬を決めてしまうことです。確認した情報を時系列でまとめ、薬をどうするかは医師へ相談します。患者さんに伝えるときも、「薬をどうするか、一緒に確認しましょう」と、自己判断だけで対応を続けないよう支援します。
まとめ
シックデイでは、食事量だけで血糖や薬の対応を判断できません。看護師は、症状、食事・水分摂取、血糖値、脱水、意識・呼吸の状態、薬の使用状況を確認し、変化を時系列で整理しましょう。
インスリンは自己判断で中断しないこと、経口薬は薬剤ごとの指示を確認すること、判断に迷ったら早めに医師へ相談すること。この3点を軸に、患者さんが安全に相談・受診できるよう支援してくださいね。
FAQ
食事が摂れない日は、糖尿病薬を全部休んでもよいですか?
一律に全部休むのではなく、薬剤ごとの対応を確認します。特にインスリンは自己判断で中断せず、薬の調整に迷ったら主治医へ相談してください。日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイドライン2024』
血糖値がそれほど高くなければ、ケトアシドーシスの心配はありませんか?
血糖値だけでは判断できません。特にSGLT2阻害薬を使っている患者さんでは、血糖値が著しく高くなくてもケトアシドーシスが起こる可能性があります。吐き気、腹痛、強い倦怠感、呼吸の異常なども確認しましょう。日本腎臓病薬物療法学会の資料
血糖値350 mg/dLは、すべての患者さんに共通する受診基準ですか?
糖尿病情報センターが示す連絡・受診の目安のひとつですが、すべての患者さんに当てはまる一律の基準とは限りません。症状や個別の指示、施設の手順もふまえて相談してください。糖尿病情報センター「シックデイ」
参考文献
- 日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイドライン2024』第20章「糖尿病における急性代謝失調・シックデイ」PDF
- 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター「シックデイ」公式ページ
- 日本腎臓病薬物療法学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する医療従事者向け資料」PDF
- 日本老年医学会関連『糖尿病治療ガイドライン』シックデイ対策資料PDF
- ディアケア「看護師が行うシックデイへの対応」2023年記事
この記事の学習を深めるおすすめ書籍
今回の記事について、さらに理解を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。
まるごと図鑑 糖尿病看護&血糖コントロール
著者:土方ふじ子
出版社:照林社
糖尿病看護と血糖コントロールを図解で整理しているので、シックデイでの薬や血糖管理の基礎を学びたい人におすすめです。
フィジカルアセスメント 根拠からわかる!実習で実践できる!
著者:中村充浩
出版社:照林社
バイタルや身体所見を根拠とともに評価する方法がまとまっており、シックデイでの観察・アセスメント力を高めたいときに役立ちます。
看護の現場ですぐに役立つ 感染症対策のキホン
著者:大口祐矢
出版社:秀和システム
感染症の基礎と感染対策を実践的に学べるので、発熱や感染が原因のシックデイ対応を理解したい人に向いています。
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