ベッド柵だけでは転倒・転落を防げない?看護で確認したい安全対策
こんにちは、ユウです。
みなさんは、転倒リスクの高い患者さんにベッド柵を使用するとき、「柵を上げておけば安全」と考えてよいのか迷ったことはありませんか?
柵があればベッドから落ちにくくなるように感じますよね。でも、柵を乗り越えたり、すき間からすり抜けたりする危険もあります。今回は、ベッド柵の役割と、看護で考えたい転倒・転落対策を解説します。
結論:ベッド柵だけに頼らず、患者さんに合わせて対策を組み合わせる
ベッド柵は、転倒・転落を防ぐための対策の一つです。柵を上げているだけで安全とは判断できません。
患者さんが柵を乗り越えたり、柵のすき間から抜けたりする可能性がないか、また、柵とベッドの間に身体が挟まる危険がないかを確認します。そのうえで、転倒の背景を評価し、必要に応じてベッドを低くする、床マットを使う、見守りを強化する、離床センサーを活用する、ナースコールを手の届く位置に置くなどの対策を組み合わせます。
判断するときは、患者さんの動きや転倒の背景、柵やベッド周囲の環境を確認します。柵を使うことで患者さんの動きを過度に制限していないかにも注意し、施設の手順に沿って対策を検討しましょう。
この記事でわかること
- ベッド柵だけでは安全と言い切れない理由
- 柵を使うときに確認したい危険
- 転倒・転落を防ぐために組み合わせたい対策
- 看護で確認・記録したいポイント
この記事の読了時間の目安:約5分
結論の根拠:柵があっても転落や事故が起きることがある
厚生労働省の医療安全対策マニュアル「転落」には、ベッド柵を設置していても、患者さんが柵を乗り越えたり、柵のすき間からすり抜けたりして転落した事例が示されています。
また、厚生労働省の「身体拘束廃止・防止の手引き」では、身体拘束による事故防止の効果は必ずしも明らかではない一方、拘束されたことで無理に立ち上がったり、柵を乗り越えたりして転落する危険が高まることが記載されています。
ベッド柵は、使い方によっては患者さんの動きを制限することにもつながります。つまり、「柵を上げれば事故を防げる」とは限らず、柵によって別の危険が生じないかも考える必要があります。
医療事故情報収集等事業の報告「ベッドなど病室の設備に関連した医療事故」でも、柵と柵の間のすき間や、柵のない部分に関連した転落が取り上げられています。
これらの資料から、ベッド柵は単独で転倒・転落を防ぐ道具ではなく、患者さんの状態や環境に合わせた対策の一部として考えることが大切です。
ベッド柵を使うときに確認したいこと
柵を乗り越える可能性はないか
患者さんが柵を越えようとする可能性がないかを考えます。ベッドから起き上がろうとしている様子や、柵をつかんで立ち上がろうとする様子がないかも確認しましょう。
「柵があるから降りられない」と決めつけるのではなく、柵を越えようとした場合に、どのような転落経路が考えられるかを具体的に想像することが大切です。
すき間から抜けたり、身体が挟まったりしないか
柵と柵の間や、柵とマットレスの間にすき間がないかを確認します。柵の固定状態や位置、マットレスとの段差も見て、身体の一部が挟まる危険がないかを考えます。
柵の種類やベッドの状態によって、危険な場所は変わります。柵の位置だけでなく、患者さんの体格や動き方も踏まえて確認しましょう。
柵を使うことで、患者さんの動きを過度に制限していないか
柵の使用によって、患者さんが自分でベッドから降りられない状態になっていないかも考えます。患者さん自身で解除することが難しい使い方は、身体拘束に該当しうる可能性があるため、施設の手順に沿って慎重に検討します。
柵を使うことが患者さんの安全につながるのか、それとも柵を越えようとする動きを招くのか。両方の可能性を考えることが必要です。
転倒・転落を防ぐために対策を組み合わせる
転倒・転落への対策は、柵の設置だけで完結するものではありません。厚生労働省の医療安全資料「転倒・転落」では、ベッドの高さや柵の位置、車椅子のブレーキ、入院時の意識状態、疾病の程度、転倒・転落歴、ADLなどの確認が挙げられています。
また、厚生労働省の「身体拘束廃止・防止の手引き」では、転倒の原因を分析したうえで、ベッドを低くする、手すりを設置する、足元に物を置かない、車椅子を調整するといった環境づくりが示されています。
患者さんの状態に応じて、次のような方法を組み合わせて検討します。
- ベッドを低くする
- 床マットを使用する
- 離床センサーを活用する
- 見守りを強化する
- ナースコールを手の届く位置に置く
- 足元に物がないか、移動しやすい環境かを確認する
- 車椅子のブレーキや位置を確認する
どの対策が適切かは、転倒の原因や患者さんの状態によって異なります。柵を追加する前に、「なぜ患者さんがベッドから動こうとしているのか」「どの場面で危険が起きそうか」を考えることが、対策を選ぶ手がかりになります。
看護で確認・記録したいポイント
転倒リスクを考えるときは、柵の状態だけでなく、患者さんの背景とそのときの状況を合わせて確認します。
たとえば、転倒・転落歴、意識状態、疾病の程度、ADLを確認します。夜間のせん妄、認知機能の低下、ADLの低下、鎮静薬・睡眠薬の使用なども、転倒リスクを考える際の背景として確認します。
観察した内容は、「ベッド柵あり」だけで終わらせず、患者さんの動きや環境も具体的に残します。たとえば、柵をつかんで起き上がろうとしていた、ナースコールが手の届かない位置にあった、柵とマットレスの間にすき間があった、などです。
患者さんの状態や動きに変化があれば、チームで共有し、対策を見直します。柵を使用していることを、安全が確保されていることと同じ意味にしないようにしましょう。
看護で意識したい実践ポイント
- 「ベッド柵を上げたら安全」と考えず、患者さんの動きや転落経路を具体的に確認する。
- 柵の固定状態、柵間のすき間、マットレスとの段差、挟み込みの危険を確認する。
- 転倒・転落歴、意識状態、疾病の程度、ADLなど、患者さんの背景を確認する。
- 夜間のせん妄、認知機能やADLの低下、鎮静薬・睡眠薬の使用なども、転倒リスクを考える際の背景として確認する。
- 必要に応じて、低床ベッド、床マット、離床センサー、見守り強化、ナースコールの配置などを組み合わせる。
- 柵を使うことで患者さんの動きを過度に制限していないか、施設の手順に沿って検討する。
- 患者さんの動きや環境を具体的に記録し、状態の変化があればチームで共有して対策を見直す。
筆者の体験談
以下は看護場面を考えるための例であり、筆者自身の実体験として記載したものではありません。
夜間、ベッド柵を使用している患者さんが、柵に手をかけて起き上がろうとしていたとします。まず「柵があるから大丈夫」と考えてしまいそうですが、患者さんが柵を乗り越えようとしているなら、柵がかえって転落のきっかけになる可能性も考えられます。
その場では、患者さんの様子やベッド周囲を確認し、ナースコールが手の届く位置にあるか、柵やマットレスに危険なすき間がないかを見直します。そのうえで、なぜ起き上がろうとしていたのかを考え、必要な見守りや環境調整をチームで検討します。
柵を使っているかどうかだけでなく、「患者さんは今、どう動こうとしているのか」を見る。その視点を持つことで、対策を患者さんの状態に合わせて考えやすくなります。
よくある質問
ベッド柵を上げていれば、転倒・転落を防げますか?
ベッド柵だけで転倒・転落を防げるとは限りません。患者さんが柵を乗り越えたり、すき間からすり抜けたりする可能性がないかを確認し、患者さんの状態や環境に合わせてほかの対策も組み合わせます。
ベッド柵を使うときは、どこを確認すればよいですか?
患者さんが柵を乗り越える可能性、柵と柵の間や柵とマットレスの間から抜ける危険、身体が挟まる危険を確認します。柵の固定状態や位置、マットレスとの段差、患者さんの体格や動き方も踏まえて見直しましょう。
ベッド柵以外には、どのような対策がありますか?
患者さんの状態に応じて、ベッドを低くする、床マットを使う、離床センサーを活用する、見守りを強化する、ナースコールを手の届く位置に置く、ベッド周囲を移動しやすく整えるなどの方法を検討します。
看護記録には何を残せばよいですか?
「ベッド柵あり」だけでなく、患者さんの動きやベッド周囲の状況を具体的に記録します。柵をつかんで起き上がろうとしていた、ナースコールが手の届かない位置にあった、柵とマットレスの間にすき間があった、などの観察内容を残し、必要に応じてチームで共有します。
まとめ
今回の記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- ベッド柵だけで転倒・転落を防げるとは限らない
- 柵の乗り越え、すき間からのすり抜け、身体の挟み込みに注意する
- 柵の使用が患者さんの動きを過度に制限していないかも考える
- 転倒の背景や環境を確認し、低床ベッド、床マット、見守りなどを組み合わせる
- 「柵があるから安全」ではなく、患者さんの動きと転落経路を具体的に考える
ベッド柵は転倒・転落対策の一部です。患者さんの状態や危険が起こりそうな場面を確認し、柵以外の方法も含めて対策を考えましょう。
参考文献
- 厚生労働省「医療安全対策マニュアル 12 転落」資料を見る
- 厚生労働省「医療安全資料 転倒・転落」資料を見る
- 厚生労働省「身体拘束廃止・防止の手引き」資料を見る
- 厚生労働省「身体拘束廃止・防止の手引き」資料を見る
- 医療事故情報収集等事業「ベッドなど病室の設備に関連した医療事故」資料を見る
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著者:中村充浩
出版社:照林社
患者の状態観察・フィジカルアセスメントの根拠と方法を学べ、転倒リスク評価や離床時の観察力向上に直結するため。
看護学生のための臨床判断
著者:三浦友理子
出版社:照林社
事例を通して臨床判断や臨床推論を養え、なぜ患者が離床しようとするかを分析して適切な対策を選べるようになるため。
看護の現場ですぐに役立つ 看護記録の書き方
著者:大口祐矢
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記事で記録の具体性が重要とされており、観察した転倒リスクや環境情報を実践的に書く技術を学べるため。
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