こんにちは、ユウです。
前回の記事「看護の基本~手指衛生~」では、手指消毒剤を使うタイミングや、手指全体にまんべんなく塗ることの大切さを紹介しました。
では、アルコール手指消毒剤は1回にどのくらい使えばよいのでしょうか。ポンプを1回押せば十分だと思っていませんか?
私自身、勤務先で使っていた製品についてメーカーに問い合わせたところ、1プッシュが約1mLで、院内で示されていた目安量2mLには2プッシュ必要だと分かりました。今回は、この経験をもとに、製品ごとの使用量の違いと、手指消毒剤を正しく使うためのポイントを整理します。
- 「1プッシュ=1mL」はすべての製品に当てはまるのか
- なぜ2mL程度が必要とされることがあるのか
- 量だけでなく、どのように擦り込めばよいのか
手指消毒で使うアルコール
1.医療現場で使われる手指消毒剤
医療現場では、患者さんのケアを行うたびに手指衛生が必要になるため、携帯用の擦式アルコール手指消毒剤をポシェットなどに入れて持ち歩くことがあります。

私の勤務先では、当時「サニサーラW 250mL」を使用していました。製品は時期や販売ルートによって仕様が変わることがあるため、現在使用する際は、必ず勤務先が採用している製品の表示と院内手順を確認してください。

手荒れが気になる場合には、保湿成分を含む製品が選択肢になることもあります。私は手が荒れやすかったため、当時は「エレファジェル150mL」を使っていました。ただし、製品の変更は自己判断で行わず、施設の感染管理担当者や責任者に相談しましょう。

現在の製品情報や医療・介護現場向けの資料は、Medical SARAYA Linkや、サラヤ業務用製品情報で確認できます。
手指消毒剤は1回に何mL使えばよいのか
1.「2mL」はすべての製品に共通する基準ではない
元記事を書いた当時、私の勤務先では、手指消毒剤を1回につき2mL程度使用するという説明を受けていました。しかし、必要量は製品の種類、ポンプの吐出量、手の大きさ、手指全体への広がり方によって異なります。
したがって、「どの製品でも2mL」「どのポンプでも1プッシュ」と一律に覚えるのは適切ではありません。現在の製品表示と施設の感染対策マニュアルを確認し、手のひらから手首まで十分に濡れ、手順を行っている間に乾ききらない量を使うことが基本です。
2.乾燥時間を量の目安にする
当時、メーカー資料には、「少なくとも手指が15秒以内に乾燥しない量」という考え方が示されていました。これは、少量をすぐに乾かしてしまうのではなく、手指全体に行き渡る量を使うという意味です。
一方、現在のWHO手技では、擦式アルコール手指消毒は全体でおおむね20~30秒を目安に、乾燥するまで擦り込むとされています。15秒や20~30秒という数字だけを競うのではなく、手のすべての面に塗布でき、最後まで擦り込める量を使用することが重要です。
日本語の手順や「手指衛生の5つの瞬間」は、国立健康危機管理研究機構(旧・国立国際医療研究センター)・AMR臨床リファレンスセンターの日本語マニュアル、および日本環境感染学会のサポートブックで確認できます。
1プッシュは何mLなのか
1.ポンプの吐出量を確認する
ここで、手指消毒剤を1回押すと何mL出るのかを考えてみましょう。

私が当時使用していた製品についてメーカーへ問い合わせたところ、ポンプの吐出量は次のとおりでした。
- 1プッシュ=約1mL
- 院内の目安量が2mLなら、1回につき2プッシュ
この計算は、当時の製品とポンプについてのものです。ポンプの種類や製品が変われば、1プッシュの量も変わります。新しい製品を使うときは、容器の表示、製品仕様、施設の採用資料を確認してください。
2.「1プッシュ=1mL」とは限らない
手指消毒剤の中には、1プッシュの吐出量が1mLより少ないもの、反対に多いものがあります。自動ディスペンサー、携帯ボトル、壁付けポンプなど、容器の種類でも差が生じます。
もし使用量を確認する必要があれば、感染管理担当者の許可を得たうえで、製品仕様書やメーカーの資料を確認します。患者さんの前で何度も試し押しをするのではなく、教育・点検の時間に確認しましょう。
手指消毒剤を正しく使う方法
1.使用前に確認すること
- 手に目に見える汚れや血液・体液が付着していないか確認する
- 汚れがある場合は、擦式アルコール製剤ではなく石けんと流水で洗う
- 濡れた手には使用せず、手を乾かしてから使用する
- 傷や強い手荒れがある場合は、上司や感染管理担当者へ相談する
2.擦り込む順番
- 必要量を乾いた手のひらに取る
- 手のひら同士を擦り合わせる
- 手の甲、指の間、指の背を擦る
- 親指を反対側の手で包み、ねじるように擦る
- 指先、爪の周囲、手首まで擦る
- 手指全体が乾くまで続ける
手のひらだけに塗って終わると、指先、親指、手の甲に塗り残しが生じます。量を増やしても塗り方が不十分なら効果を十分に発揮できないため、量と手技をセットで覚えましょう。
3.手袋を使う場合
手袋は手指衛生の代わりにはなりません。手袋を装着する前と外した後に手指衛生を行い、同じ患者さんのケア中でも汚染部位から清潔な部位へ移るときは手袋を交換します。
手袋を外した直後は、手袋の表面に触れたり、外す動作で手が汚染されたりする可能性があります。外した後にベッド柵や記録端末へ触れる前に、必ず手指衛生を行いましょう。
筆者の体験談:1プッシュが当たり前になっていた
私の勤務先では、職員がポシェットに手指消毒剤を携帯することになっていました。私自身も、患者さんのケアの前後には1プッシュすることを習慣にしていました。
ところが、手指消毒剤の使用量についてメーカーへ詳しく問い合わせたところ、当時の製品は1プッシュ約1mLで、院内で説明されていた目安量2mLには2プッシュ必要だと分かりました。これまで「1回押せば十分」と思い込んでいたため、まさに衝撃でした。
さらに、手の表面に塗り広げている途中で乾いてしまう量では、指先や手の甲まで十分に行き渡らない可能性があります。私がこの事実を病棟スタッフへ伝えたときも、1プッシュの吐出量や必要量を正確に知っている人はほとんどいませんでした。
この経験から、手指衛生は「実施しているかどうか」だけでなく、製品の吐出量、必要量、塗り残し、乾燥までの時間を確認する必要があると学びました。ただし、1プッシュ=1mL、2プッシュ=2mLという数字は、当時の製品に関する私の勤務先での経験です。すべての製品にそのまま当てはめないようにしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1.手指消毒剤は必ず2プッシュ使うのですか?
A.必ずではありません。2プッシュというのは、1プッシュ約1mLの製品で、2mLを使用する場合の計算です。製品やポンプによって吐出量が違うため、製品表示と施設の手順を優先してください。
Q2.1プッシュでも殺菌効果があるなら、1プッシュでよいのでは?
A.少量でも一定の効果が示される試験はありますが、試験条件と臨床での手指衛生は同じではありません。少量だと手指全体に行き渡らず、指先や親指に塗り残しが生じることがあります。手指全体が濡れ、乾くまで擦れる量を使うことが大切です。
Q3.手が濡れているときにアルコールを使ってもよいですか?
A.原則として、手を乾かしてから使用します。水分が残っていると製剤が薄まり、十分な効果や乾燥時間に影響する可能性があります。
Q4.手が目に見えて汚れている場合もアルコールでよいですか?
A.目に見える汚れ、血液、体液がある場合は、石けんと流水で洗います。トイレの後や食事の前、施設の感染対策マニュアルで流水手洗いが指定されている場面も、手洗いを行います。
Q5.手荒れがある場合はどうすればよいですか?
A.保湿剤の使用や製品変更を検討できますが、自己判断で手指衛生を省略してはいけません。ひび割れや出血がある場合は、所属施設の感染管理担当者や産業保健スタッフへ相談してください。
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ユウのアドバイス
手指衛生では、「1プッシュする」という動作だけを覚えるのではなく、使用する製品の吐出量を確認し、手全体に行き渡る量を使うことが大切です。
今回の私の経験では、1プッシュが約1mLだったため、2mLを使うには2プッシュ必要でした。しかし、これは製品によって変わります。実習先や勤務先で使っている製品の表示・手順を確認し、分からないときは感染管理担当者に聞いてみてください。
「手指衛生をしているつもり」から一歩進んで、量・範囲・タイミングまで意識できると、より安全な看護につながります。
関連:看護の基本~手指衛生~
参考文献・資料
- 一般社団法人 日本環境感染学会:手指衛生教育用資料
- 一般社団法人 日本環境感染学会:手指衛生「5つの瞬間」サポートブック
- 国立健康危機管理研究機構(旧・国立国際医療研究センター)・AMR臨床リファレンスセンター:手指衛生テクニカルリファレンスマニュアル 日本語版
- World Health Organization:WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care
- サラヤ株式会社:Medical SARAYA Link
※この記事は看護学習のための一般的な情報です。実際のケアでは、患者さんの状態、使用する製品の表示、所属施設の感染対策マニュアル・手順を優先してください。商品画像・製品名は元記事の体験を説明するために掲載しています。




コメント
こんにちは。
手指衛生についてネット検索していて、ここに辿り着きました。看護師をしています。すごく勉強になります、こういうサイトありがたいです。
ただ、今回の内容では、1回の適切な使用量は文献等によって異なると思います。手の小さな女性と手の大きな男性では1回量は違います。なので、1プッシュではなく2プッシュというのも言い切れないと思いますし、ローションタイプとジェルタイプでも使用量や使用方法は異なると思います。
看護行為毎に手指衛生をするのは大変だし、微生物は普段見えないぶん忙しいとなかなか難しいところもありますよね。この記事を読んで患者さんのため、自分のために頑張ろうと思いました!
コメントありがとうございます。
確かに、おっしゃる通りです。一概に2プッシュが良いとは言い切れませんが、記事にもある通り、手指消毒剤の1回の適切な使用量は「少なくとも手指が15秒以内に乾燥しない量」とWHOの基準があります。
これに基づいて手指消毒剤を使用していただくと、自分が1回1プッシュで良いのか、2プッシュ必要なのか分かりますね。
看護に携わる方に、少しでも感染対策の意識を持っていただけたら私もうれしく思います。
はじめまして。
私も感染管理について勉強する者です。
サラヤさんにの営業さんに聞いたところ、ワンプッシュで良いとの解答でしたが、学術に問い合わせると2プッシュと言われました。個人持ちしていれば手指消毒の遵守率が上がるのは周知の事実ですが、一回量が2プッシュだとそれを守る人も少なく、本当の意味での遵守率の向上にならないと思いました。意味のないことをやってもね、、(´・_・`)
どうされてますか?
ご質問ありがとうございます。
遵守率の向上はお互いに頭を悩ませますね。。私の病院では、毎月、手指消毒剤の使用量をチェックしています。
そして、他病棟の使用量と比較し、院内での順位をみんなに知らせています。その都度、「1回2プッシュを心がけましょう」と周知するよう説明しています。
また、独自に病棟内で個人の使用量をグラフにし、一般企業でいう営業ノルマみたいな棒グラフを掲示することで、意識の向上に取り組んでいます。
結果的に、昨年度よりは使用回数や使用量は上昇しているものの、飛躍的な向上とまではいかず、底上げ程度に留まっている状況です。
いろいろ努力していますが、個人の意識改革が難しいですね。。。
感染対策がより注目される時代になりました。
CDCのガイドラインの “1mlでは不十分” は、ジェル製剤が普及していない時代の、液体製剤に関する情報です。
すでに指摘がありましたが、ジェル製剤で一律に「2mlでないとだめ」と明確に示せる情報はありません。1mlで十分効果があるとも、不十分との報告もあります。
「一概に2プッシュが良いとは言い切れません」と回答されています。ところが、サニサーラWに限定したとしても、何秒維持できるかは検証されていません。結局のところ、なぜ、1mlでなく2mlでないといけないと断言しておられるのでしょうか。
手の大きさや使い方でも必ず個人差があります。
また、「1プッシュ(1ml)でも大腸菌が約99.9%殺菌されるようなので全く効果がないというわけではないようです。」とは、どういう意味でしょうか。100%でないとダメという考えでしょうか。
「多くの施設では1回につき2mlの使用を推奨しています」とは
何施設を対象に調べて、うち何施設で2mlとされていたのですか。何をもって「多く」とされているのでしょうか。いずれの施設も同じ製剤だったのですか。
実際のところ、ジェル製剤を基本1プッシュの方針としている施設も「多く」ありますが。
そして何より気になるのは、「うちの病院にも一応、感染のなんちゃって認定看護師がいますが、大きな態度をする割には、正直、使えないです」
と、インターネット上で特定の個人を誹謗中傷されていることです。
コメントいただきありがとうございます。
お返事が遅くなり申し訳ございません。
手指消毒剤の使用に関しては、メーカーの推奨量がありますので
サラヤのサニサーラWの場合、2プッシュを推奨しているということです。
CDCガイドラインは権威があり、今だに多くの文献で引用されておりますので、手指消毒剤に関して新たなガイドラインが出ることを願っています。
1プッシュで99.9%殺菌されるので、1プッシュでも個人的には十分な効果があると考えていますが
あくまでメーカーの使用推奨量に準ずると2プッシュという意味です。
「多くの施設」というのは、インターネットでざっと調べたところということです。
製剤の種類については分かりません。
研究発表論文ではなく、あくまで個人のブログ記事なので、そこまで求められても困ります。。
本記事は一般の方や病院関係者でさえ手指消毒剤を少量(ノズルをギュッと下まで1プッシュもしくはそれ以下)でも付けたら消毒できたと思っていることへの警鐘の意味を込めて、意外とたくさん使わないと効果があまりないですよということを発信しています。
個人が特定できてしまう可能性がある部分については削除させていただきました。
ご指摘ありがとうございました。