術後合併症 ~術後イレウス(腸管麻痺)~



術後イレウスとは、術後に胃や小腸、大腸の運動が抑制され、腸管の運動が弱くなったりほとんど無くなってしまったりした状態のことです。

開腹手術で消化器官に侵襲をきたす術式でなければ、ほとんど問題にはなりません。

 術後イレウス(腸管麻痺)

1.出現しやすい時期

開腹手術後、72時間以上経過しても腸管の運動がほとんど無い場合に診断されます。

通常、消化管運動が回復するまでに小腸は8~24時間、胃は24~48時間、大腸は48~72時間程度といわれています。

この状態を生理的イレウスといい、おおよそ48~72時間以内に腸の蠕動運動が再開して排ガスが起こり回復します。

2.原因

生理的イレウスとなった後、回復しなければ、術後イレウス(術後腸管麻痺)になります。

術後イレウスは2分野、全部で4種類あります。

機械的イレウス

腸管の閉塞を起こしているイレウスで、血流障害の有無によって単純性イレウスと絞扼性イレウスに分類されます。

  • 単純性イレウス(閉塞性イレウス)
    大腸疾患や腹壁の切開した部分、縫合不全部位などで起こる腸管との癒着(治っていく過程で本当はくっついて欲しくない組織同士がくっつくこと)や、吻合部(腸管をつなぎ合わせた部分)の狭窄によって、腸が便や食物などで塞がってしまった状態です。血行障害は起こしていません。
  • 絞扼性イレウス(複雑性イレウス)
    腸が何らかの原因により首絞め状態となり、血流が障害され血液が来なくなってしまう状態。緊急手術を要する。首絞め状態となってから数時間以上が経つと首絞めとなった腸は壊死を起こす。
機能的イレウス

腸管の閉塞や首絞めではなく、腸管自体の運動の異常によって起こるもので、麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分類されます。

  • 麻痺性イレウス
    腸管運動の麻痺によって、便や食物などが腸内で滞ってしまった状態です。発症の要因として、長時間の手術、高齢者、低栄養患者、麻酔、筋弛緩薬の影響、電解質異常などがあります。
  • 痙攣性イレウス
    腹部打撲、限局性の炎症、腸管支配神経の障害、結石発作などが原因です。腸管の一部が痙攣したようになり、不規則な蠕動運動によって便や食物の移動に支障をきたしている状態です。

3.症状

単純性イレウス(閉塞性イレウス)

ゆっくりと症状が出ます。断続的な腹痛や嘔吐、排ガスや排便の停止、腹部膨満、腸蠕動音の亢進と金属音など。

紋扼性イレウス(複雑性イレウス)

急に症状が出ます。持続的で激しい腹痛と嘔吐、絞扼部の腸管が局所的な腫瘤として触れる(Wahl徴候)、ショック症状、腸蠕動音の減弱・消失、腹水など。

麻痺性イレウス

ゆっくりと症状が出ます。食欲減退、腹部膨満、嘔吐、排ガスや排便の停止、腸蠕動音の減弱など。

痙攣性イレウス

ゆっくりと症状が出ます。周期的な腹痛や嘔吐、腹部膨満、排ガスや排便の停止など。

4.術後イレウスへの対応

術後イレウスの予防には、腸管の蠕動運動を促進する援助が必要です。

  • 体位変換や離床により、腸管に刺激を与え、蠕動運動を促します。
  • 術後の安静は最低限とし、自由に身体を動かすことで、精神的にも緊張がほぐれ、副交感神経を優位にします。
  • 術後早期の活動とともに経口摂取を始めて、蠕動運動を促します。

 

術後イレウスの治療としては以下のとおりです。

単純性イレウス

基本的に保存治療を行います。軽度であれば、絶食や輸液のみで軽快します。鼻から胃管やイレウス管を挿入し、ガスや液体などの腸内容物を外に排出します。単純性イレウスのうち、癒着性のものはイレウス管の挿入で約9割が改善すると言われています。

絞扼性イレウス

治療は手術をして首絞めの原因となっているものを切除することです。腸の一部が壊死している場合は、その部分を切除し正常な腸の部分とつなぎ合わせます。

麻痺性イレウス

麻痺性イレウスに対しては、基本的に保存療法です。単純性イレウスの時と同様に鼻から胃管やイレウス管を通して腸内に溜まったガスや液体を排出して、症状が改善するのを待ちます。

痙攣性イレウス

イレウス自体の治療というよりは、原因となっている疾患の内科的治療が重要になります。痙攣性イレウスでよく知られているのは鉛中毒によるものです。中毒による痙攣性イレウスに対しては、腸管の動きを司る神経に障害をもたらしている原因物質を取り除くことが最良の治療になります。

5.イレウスといえば金属音?

腸蠕動音は、正常では、「グルグル」「ゴロゴロ」。5秒から15秒に1回聞こえます。腸管が麻痺している麻痺性イレウスでは、腸蠕動音が5分以上確認できません。

腸管の機能自体には問題がない機械性イレウスでは、腸蠕動運動が亢進します。閉塞や絞扼が生じている部分より口側の腸が、先に内容物を送ろうとするためです。

亢進した腸蠕動音は、金属音のような音です。「カンカン」「キンキン」「カラコロ」「ペチペチ」など。金属の板の上に水を垂らしたような音と言われます。イレウスの時は、腸管が膨らみます。膨らんだ腸管の中を消化液などの水分が移動する時、金属音のような音が出ます。

よく「イレウス=金属音」といった認識をしている方が多くいますが、金属音が聞かれるのは単純性イレウス(閉塞性イレウス)のみで、しかも単純性イレウスであっても金属音が聞かれることはあまりありません。

イレウスに共通する症状としては、

  • おならや便がほとんど出ない
  • 腹痛
  • 嘔吐
  • 腹部の張り(腹部膨満)

といった症状の方がよっぽど多くみられます。金属音が聞かれないからイレウスではないと判断するのは誤りです。しっかり覚えておきましょう。

6.術後合併症まとめ

7.オススメ書籍「術前・術後ケアの基本」

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 ユウのアドバイス

術後合併症の中でも、術後イレウスはかならず押さえておきたい合併症の一つです。学生さんだと、イレウス=金属音というイメージが強いと思いますが、実際の現場では金属音なんて滅多に聞くことができません。レントゲン上、著明に腸管が膨満していることの方が多く見られます。金属音にこだわりすぎないように注意しましょうね!




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