手術による侵襲とその看護について



看護学生からよく聞かれる質問の一つに、

「侵襲ってなんですか? というものがあります。

急性期看護実習では、必ずと言っていいほど勉強する分野ですね。

今回は、侵襲についてできるだけわかりやすくお教えしましょう。

 侵襲とは

1.侵襲とは

身体を傷つける行為すべてを侵襲といいます。

具体的には、手術や投薬、注射などの医療行為、外傷や骨折、感染症などの病気や怪我を指します。
医療行為や病気、怪我によって身体がなんらかの侵襲を受けると、身体の中では様々な反応が起こります。

2.侵襲を受けると?

恒常性の維持と生体反応

侵襲を受けると、私たちの身体は侵襲の刺激を少なくしようとします(恒常性の維持)。
その結果、生体に神経系や内分泌系、免疫機構、代謝に関して急性反応が出現します。
この全身的な防御反応を「生体反応」といいます。

一般的に侵襲の程度が増大すればするほど、この反応は大きくなり、それに伴って体温・脈拍・呼吸・血圧・尿量といったバイタルサイン(生命徴候)が大きく変動します
侵襲の中でも、とくに手術侵襲による影響は必ず覚えておかなければいけません。
手術では原疾患に対する手術の術式・手術時間・出血量などによって侵襲の程度が大きく左右されます。

3.手術侵襲

 
手術では、メスを使い身体を傷つけるという行為がなされるため、侵襲とみなされます。
手術では、身体の損傷のみではなく、複数の侵襲因子にさらされています。
特に手術と感染は密接に関わっており、身体の損傷以外にも感染という侵襲がはらんでいます。

4.侵襲による生体反応

侵襲による生体反応は大きく分けて次の3つしかありません。
「頻脈・血圧の上昇」と「尿量の減少」と「血糖の上昇」だけ覚えておけば良いでしょう。
様々なことが原因となっており、非常に複雑なので、ここではざっくりとまとめました。

頻脈・血圧の上昇

末梢血管の収縮を促進し、心収縮力や心拍数を増加して循環血液量を維持しようとします。
心収縮力の増加や心拍数の増加は心負担を大きくさせるため、心予備力が低下している状態では心不全に移行しやすいので注意が必要。

 

尿量の減少

循環血液量を維持するために、尿として出る水分を減らそうとする働きも起こります。その役割を担うのが、アルドステロンバソプレシンです。

アルドステロン腎臓の遠位尿細管に作用してナトリウムと水を再吸収し、体液量を増加させます。またそれに伴ってカリウムの排出を促進します。
バソプレシン:抗利尿ホルモンとも呼ばれます。有効循環血液量が減少した時に分泌が促進され、尿量を抑えることで濃縮尿となります。

 

血糖の上昇

生体は侵襲が起こると、それに対抗するためのエネルギーを作り出そうとします。(糖新生)
その役割を担うのが、カテコールアミン副腎皮質ホルモンです。

カテコールアミン:インスリンと逆の反応をすることで、肝臓からグルコースを放出させ血糖を上昇させます。
副腎皮質ホルモン:蛋白・糖・脂質・電解質・コラーゲン・骨等の代謝にかかわっており、低血糖や精神的・身体的ストレスなどによって値が上昇します。そして、糖新生を促進(血糖値上昇作用)させたり、タンパク質の分解(蛋白異化)や脂肪の分解を促進させたりします。

蛋白異化促進ではエネルギーを得るためにもともと身体に蓄えられている脂肪が燃焼され、その時同時にタンパク質も消費するためTP、Albの減少(低蛋白血症)が生じます。術前に絶食などの措置が行われていたら、さらに低栄養が進行する可能性もあります。

 

5.術後の心理状態

手術侵襲のなかには、術後の心理状態も含めるという考え方もあります。
術直後は、疼痛や苦痛が生じ、回復にいたるにつれて、社会関係に関心を持ったり、新たな不安や葛藤を抱えるということもあります。

6.ムーアの分類

侵襲による生体反応をまとめたものにムーアの分類というものがあります。
参考までに掲載します。

第Ⅰ相(異化期・急性傷害相) 術後2~4日間

4.侵襲による生体反応で示したように、高血糖や水分貯留、成長ホルモンの亢進、尿細管での水分吸収促進、サードスペースへの水分貯留、筋タンパクの分解、脂肪の分解促進、糖新生亢進などが起こります。

第Ⅱ相(異化~同化期・転換相)術後3~5日目に始まり、1~3日間持続

神経内分泌反応は鎮静化に向かい、水・電解質平衡が正常化していく時期です。手術侵襲が過大であれば、転換期の発来は遅延し、異化期(第Ⅰ相)は遷延することとなります。ADHやアルドステロンによって体内の第3腔に貯留していた水分が体循環系へ戻り、ナトリウム(Na)と過剰な水分は尿となって排出されます。

第Ⅲ相(同化期・回復相)術後6日~数週間

タンパク質代謝が同化傾向となり、筋タンパク質が回復する時期です。
一般的には手術後1週間前後から始まり,手術侵襲の程度にもよるが2~5週間持続します。創傷治癒機構が促進されます

第Ⅳ相(脂肪蓄積期・脂肪増加相)第Ⅲ相から数か月

筋タンパク質の合成(筋肉の再生)が進むとともに、脂肪が蓄積されていきます。

7.侵襲に対する看護

・術前訪問で情報収集する際に、社会関係等の情報から術後の不安を予想し、心理的な変化や社会的な変化をとらえることが必要
・ 術前より術式、予備能の評価をし、事前に適切な術後管理計画を立案することが必要
・ 脱水や貧血のリスクがあり輸液や輸血、栄養障害にIVHの可能性があることも認識が必要

8.オススメ書籍「術前・術後ケアの基本」

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 ユウのアドバイス

侵襲と生体反応については、非常に複雑で、正直なところ詳しく調べるほど訳が分からなくなってきます。術後は、ざっくりと「頻脈・血圧の上昇」、「尿量の減少」、「血糖の上昇」が起こるということを覚えておけば良いでしょう。ヾ(ω` )/



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4件のコメント

  • 看護学生

    はじめまして。実習の記録を書く際に参考にさせていただいています。根拠がわかりとても分かりやすいです。
    質問なのですが、膝人工関節置換術を行った患者さんがCPMを行うことによって創治癒促進の効果がもたらされるというメカニズムについて教えていただきたいです。
    よろしくお願いいたします。

    • ユウ

      ご質問ありがとうございます。ユウです。
      >膝人工関節置換術を行った患者さんがCPMを行うことによって創治癒促進の効果がもたらされるというメカニズムについて教えていただきたいです。

      いろいろ調べてみましたが、はっきりとしたことは分かりませんでした。申し訳ありません。
      しかし、一般的な回答として、膝の曲げ伸ばしを行うことによって脚の血流が促進されるため、損傷した細胞や組織が活性化することで創治癒促進の効果があると言えるでしょう。ご参考までに。

  • 看護学生です。

    コメント失礼します。
    手術による免疫低下について調べているのですが、ストレスや体温低下によるもの、麻酔によるものがあるとざっくりわかったけれど機序がわかりません。
    教えていただけないでしょうか??

    • ユウ

      ご質問ありがとうございます。
      とりあえず、ざっくりと分かれば良いと思います。詳しいことは、今後記事にしていきます。
      以下、ざっくりと説明します。

      ➀ストレス
      免疫力の低下を起こす原因の一つとして、手術に伴うストレスがあげられます。手術を受けることで、身体には非常に大きなストレスがかかります。
      すると、血液循環が悪くなり細胞レベルで低酸素状態になります。すると免疫細胞の働きを抑制する物質が生成され全身の免疫力が低下することになります。

      ➁低体温
      外科手術後は麻酔による影響や手術室の寒い環境などから、低体温になりやすいと言われています。
      低体温になると血管が収縮して、全身の血液の流れが悪くなり免疫細胞の働きが悪くなります。

      ➂麻酔
      大きな手術はほとんどが全身麻酔で行われます。麻酔薬は体のもつあらゆる免疫系統に作用してその働きを抑えることがわかっています。

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